札幌を寛容な実験都市へ―組織を超え、手を取り合った「NoMaps Flight大作戦」

富山 浩樹

サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長CEO

1976年札幌生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社し福島や東京で勤務。2007年株式会社サッポロドラッグストアーに入社。営業本部長の傍ら2013年に株式会社リージョナルマーケティングを設立し、北海道共通ポイントカード「EZOCA」の事業をスタートする。
2015年5月に代表取締役社長に就任。2016年より新ブランド「サツドラ」の推進をスタートする。同年8月にはサツドラホールディングス株式会社を設立し代表取締役社長に就任。「地域をつなぎ、日本を未来へ。」のコンセプトのもと、店舗や地域の資産を活かして新たな課題解決型ビジネスの創造を目指す。
その他 AWL株式会社、 株式会社コンサドーレにて取締役を務め、株式会社出前館、バリュエンスホールディングス株式会社にて社外取締役を務め、QUALITY HOKKAIDO一般社団法人では代表理事、EO Hokkaidoではガバナンス理事を務める。
また、2020年6月より北海道経済コミニティ「えぞ財団」を立ち上げて活動中。

記事のハイライト

  • コミュニティの熱を帯びる次世代へのバトン

  • Flight大作戦が証明した都市としてのポテンシャル

  • 混沌と交流のなかでみつける自分だけのワクワク感


コミュニティの熱を帯びる次世代へのバトン

立ち上げ当初のNoMapsへの印象と関わり始めたきっかけを教えてください。

最初のイメージは、僕らより少し上の先輩たちが熱量を持ってつくり上げてきたムーブメントという印象で、率直に「すごいな」と思っていました。

僕が関わりはじめたきっかけは登壇者として声をかけてもらったことでした。ちょうど僕自身コミュニティづくりに取り組んでいたこともあって、「どうせやるなら一緒に、何かやりましょうか」と、部分的に携わらせてもらってきました。自分としては、ずっと“ななめ後ろ”くらいの距離感で関わってきた感覚です。

「ななめ後ろ」の立ち位置からNoMapsを見守ってくださっていたわけですが、当時から現在にかけてNoMapsへの印象に変化はありましたか?

当時のNoMapsはふわふわしていた印象がありました。

現在はそのふわふわした部分を残しつつも、いい意味でのカオス感がどんどん増してきたなと感じています。

大人たちに巻き込まれて関わっていた若い世代が気づいたら主体的にNoMapsの活動をおこなっている。ここ数年は次の世代へのバトンタッチも活発になっているなと感じますし、このカオスな交流の生まれ方は、全国的に見てもなかなか珍しい動きでいいなと思っています。

地域をフィールドに活動していると「NoMapsに一度は参加してみたい」という声を全国各地で聞くことがあります。参加した人から人へと伝播して、年々知名度が上がっていることを感じます。

たしかにフィールドはどんどん広がっていますね。NoMapsはこの10年を経て、地域社会にどんな変化をもたらしたと思いますか?

「NoMapsで出会った人と、今も一緒に何かをやっている」という話をよく聞きます。

僕らの会社は「地域コネクティッドビジネス」を掲げていて、地域とのハブになり、ビジネスを生み出し続けるというビジョンを掲げて活動しています。NoMapsに初めに関わったのは僕でしたが、最近はうちの社員が僕も知らない地域のネットワークに入り込み、活動しているということも増えてきました。

“薄く広いネットワーク”から、”濃く狭い関係性”が生まれ、熱が上がっていくような変容がNoMapsをきっかけに起きている。地域にとってこのような熱量あるコミュニティが生まれていくのはとても重要なことだと思います。

よく「イベントは楽しかったで終わるべきじゃない」と言われますが、その一方で、「行動しなきゃいけない」と強迫観念のようになってしまうのも違う気がしています。

NoMapsへの参加をきっかけに得た繋がりがすぐアクションや変化になる人もいれば、10年後に「あのときにNoMapsに参加してよかった」と振り返る人もいる。その寛容さこそがNoMapsらしさなのかもしれません。

Flight大作戦が証明した都市としてのポテンシャル

NoMapsだからこそ実現できたなと感じる企画はありますか?

「NoMaps Flight大作戦」は、まさにそうだったかもしれません。この企画は他地域のイベントから着想を得たのがきっかけでした。

地域イベントというのは講演テーマやゲストを目当てに来る方ももちろんいらっしゃいますが、「何か面白そうなことが起きそう」という偶発的な何かに期待して来る人が多い。

だったらイベントに向かうまでの移動や宿泊といった動線そのものを、楽しい体験としてデザインしてみたらどうなるのだろうか…そんな仮説を検証してみたかったのです。

最初、企画内容を聞いたときは驚きました。会社やホールディングス単位で実現するという道もあったのでしょうか?

会社単位ではやりづらい部分があったと思います。NoMapsで立ち上がるプロジェクトは、いい意味で「利害関係のない共犯者」が多い。会社だとどうしても、雇用関係や取引関係が前提になってしまい、気づけば“業務”になってしまうのです。

Flight大作戦も、動き出したときに「一緒にやりたい」と手を挙げてくれた人がたくさんいて、自然と運営チームが生まれました。最終的には100人弱が搭乗してくれました。「この企画がなかったら、NoMapsには来ていなかった」という人も。自分にとっても、面白い実験だったなと思っています。

NoMapsがこうした社会実験的なアクションを取ることには意義があると思っています。まさにまだ地図のないことをやっている感覚。これをシティプロモーションとして、札幌市と一緒に取り組めたら面白いなと思っています。

次の10年へとNoMapsをつなぐために、「こんな取り組みをしたらどうか」というアイデアがあれば教えてください。

人口減少や少子高齢化など地域や社会の課題に向き合い、課題ドリブンになることはもちろん大切です。ですがマイナスをゼロに戻す、ゼロをマイナスにしない、という役割だけでは、どこか砂に水をまいているような感覚があります。

新しいものを生み出し、稼ぐ力も地域には必要です。札幌には、全国や世界からそうした挑戦を呼び込めるポテンシャルがあると思っています。

公民連携や札幌市の取り組みの一つとしてNoMapsが位置づけられ、「札幌だから、NoMapsだからこそ新しいことができる」と、街全体をチャレンジフィールドにしていく。

そんな共通認識を、これからの10年で掲げていけたらいいですね。

混沌と交流のなかでみつける自分だけのワクワク感

今後NoMapsを通じて挑戦してみたいことはありますか?

どれくらい時間がかかるかは分かりませんが、NoMapsがきちんと利益を生む仕組みをつくっていきたいと思っています。

今はカンファレンスとしての収益モデルやストックの仕組みが弱く、開催直前までスポンサー集めに苦労しているのが現状です。

料金プランや会員制度を整え、資金をきちんと蓄積できる仕組みをつくる。実際にお金を出してくれるのは参加する企業になるので、企業がもっと関わりたくなる形を模索していきたいです。

最後に未来の参加者に向けてメッセージをお願いします。

結局、楽しくなきゃいけないと思います。

ただ、「楽しい」の形は人それぞれ。野球が好きでも、チームプレーが好きな人もいれば、厳しい練習を乗り越えた達成感が好きな人もいる。それは、実際にやってみた人にしか分からない感覚です。

NoMapsも同じで、最初は巻き込まれて面倒くさいと感じていた人が、終わってみたら「意外と楽しかった」ということもある。

話を聞いたり、交流したりするなかで、自分は何にワクワクするのか、何を楽しいと感じるのか。それを見つけるきっかけにNoMapsがなるかもしれません。

だからこそ、まずは楽しんで参加してもらえたらと思います。


インタビューを終えて

 イベントまでの移動をコンテンツへと昇華させた「NoMaps Flight大作戦」。その背景には、潜在的なNoMapsの存在意義があった。

学びや交流を重視するばかりではなく、「楽しむ」環境を作り出すこと。これを組織や公民の垣根を超えて、積極的に作り出せることがNoMapsらしさなのかもしれない。

多くの参加者が札幌をフィールドにNoMapsが仕掛ける社会実験がどんな景色を生み出すのか、今後も目が離せない。

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