【若者の流出を食い止める選択肢】NoMaps 10年の結実と「ゲームのまち・札幌」再興へのロマン
松井 健太郎
NoMaps実行委員
1977年生まれ。北海道出身。フリーのエンジニアとして活動後、2007年に株式会社インフィニットループを設立しゲーム開発などを手がける。2019年には株式会社ドワンゴとの合弁会社である株式会社バーチャルキャストを設立し代表取締役社長に就任(2023年に退任)、VRプラットフォームの立ち上げと運営を行う。現職はインフィニットループ代表取締役会長、新規事業を担当し、新しいプロダクトを開発している。

記事のハイライト
「北海道」で「面白いことをする」ということ
いい意味で“ゆるい”。そして“変な人”が集まる場所
再び「ゲームのまち・札幌」へ
「北海道」で「面白いことをする」ということ
どんな課題意識があって、NoMapsへの参画に至ったのでしょうか。
“北海道から東京に出てしまう人を減らしたい”というのは、ずっと自分が解決したいと考えていることです。
北海道の人って、地元のことがすごく好きな人が多いと思うんです。だけど北海道にはやりたいことをできる職場の選択肢がほとんどない。だから、地元に残りたいのに東京へ行く。
その状況が長く続くと、北海道は抜け殻になってしまうという懸念がありました。
せっかく面白いことをしたいと考える優秀な若者がたくさんいても、その受け皿がないと、良い人材は流出していくばかりです。
インフィニットループという会社を立ち上げたことも、札幌移住計画という活動を始めたことも、そしてNoMapsに参画したのも、すべて根底にはその課題意識があったからです。
「北海道」で「面白いことをする」ことに意味を持たせたかった。
その課題に対して、No Mapsが果たしてきた役割や生み出した変化について教えてください。
NoMapsがきっかけで、北海道に「面白い人」は確実に増えていると実感しています。
そして特にNoMaps期間中はその「面白い人」が増える。集まっているみたいな感覚があります。それを道外の人にもうまくPRできている。
「こんな人たちが北海道にいるんだ」とか「自分も北海道に帰ろうかな」と考えてくれる人も増えていて、移住者もどんどん増えています。
今後もっとこの流れを強めていきたいですね。

いい意味で“ゆるい”。そして“変な人”が集まる場所
あなたの “#NoMapsのおかげ(NoMapsをきっかけに生まれた価値や変化)” を教えてください。
バーチャルキャストは、NoMapsが大きく影響して生まれたプロダクトだと思います。
インフィニットループが手掛けたVRサービスの中で、最も大きなものです。
現在は別の会社が開発・運営していますが、元々はインフィニットループが作っていたもの。開発段階のものをNoMapsで展示していました。
ユーザーの感想を聞いたり改善点を見つけたりする機会になりました。
展示の場がNoMapsだったからこそ良かったという点はありますか。
いい意味で“ゆるい”ということですね。
普通の展示会だと、決まったスペースの中で限られた設備の中で設営をする必要がありますが、NoMapsにはそういったルールが少ない。
例えば「大きい画面があったら面白いことができるのに」とこぼしたら「大きい画面用意してよ」と言って、かけあってくれる。そのゆるさが良かったと思います。
「こういう環境が一番活きるプロダクトなんだけど、こういう場所がない」と言ったら「ここで展示してみたら?」と言ってくれる、そういう柔軟さがNoMapsの良さですね。
「面白い」ことにチャレンジする懐の深さがあると思います。
この10年の活動を通じて、NoMapsは地域の人々の意識や行動、関係性、文化にどのような変化をもたらしたと感じますか。
いい意味で「変な人」が増えました。
“変”って、誰も思いつかなかったり、他ではやっていないことだったりする。そういうことをやっていたり、そういうことに興味がある人ですね。だからこそ魅力的で求心力があるんです。
そしてこれから、変な人たちがいるから楽しくて人が集まる、という流れができていくと思います。今、まさに人が集まっている最中なんじゃないかな。
みんながその中でさらに変な活動をしていくから、これからもっと面白い変化が出てくると思いますね。
では、このNoMapsでの10年間で感動したことや印象に残っている光景はありますか。
毎年それぞれ感動することがあるのですが、10年もやっていると忘れてしまいますね(笑)。
最初の頃はNoMapsのゴールが見えなくて、テックカンファレンスやSBSW、音楽など、いろいろなものを参考にしながら試行錯誤していました。進むべき方向がわからなくて、ウロウロしていた時期も長かったと思います。
でも五十嵐さんがプロデューサーとして入ってからは「わからなくてもいいんだ」という考え方になりました。
1つのテーマを作ろうとするのではなく、いろいろなカテゴリを持って進めるという方針にした。それが良かったと思います。
五十嵐さんは、乾杯の音頭のときに「愛と好奇心」という言葉をよく使いますが、まとめるとそれが大きなテーマなのかな。あの乾杯の光景、とても良いと思います。
今のこの形は、もちろん私一人ではできなかったことで、いろんな人たちが集まって形になっていったものです。
だからこそ、NoMapsというイベントが「変な人が変な人を呼ぶ」という形で、よくわからないけど形になっていき、毎年大きくなっていくことに感動がありますね。

再び「ゲームのまち・札幌」へ
では、NoMapsを通じて今後挑戦してみたいことはありますか。
一般の人への知名度をもっと上げていきたいと思っています。札幌で通行人に「NoMapsを知っていますか?」と聞いても、ほとんどの人が知らないと答えるでしょう。
NoMapsを知って参加してくれているのは、北海道外の人や感度が高い人。札幌に、そして北海道に住んでいる皆さんに、広く知っていただけるイベントにしていきたいです。
多分、現状のNoMapsは“なんか意識が高そうなイベント”で、“参加するにはちょっと敷居が高いな”と思われている。
もちろんその敷居の高さは必要なものだけど、敷居が低いものがあってもいい。参加ハードルにグラデーションがあるのがベストですね。
参加の敷居を下げるため、具体的に何か考えていらっしゃることはありますか。
ゲームに関するカテゴリーを作りたいです。カテゴリ名は「NoMaps GAMING」とか、いいんじゃないかな。
これは、うちがゲーム制作会社であることも一つありますが、札幌が昔からハドソンなどのゲーム会社があった「ゲームの街」であることが、大きな理由ですね。
札幌市は、最近ゲーム産業の支援を始めていますが、20年遅いところはあると思います。
同じ失敗を繰り返さないためにも、昔はすごかった札幌のゲーム産業が今どうなっているのか、そして今後どうしていくのかをNoMapsで考えていきたいです。
ゲームは一般の人にもキャッチーなコンテンツ。そういう、誰もが触れて楽しいと思えるものが外側にあって、内側にはディープにも楽しめるものがある。そんな設計がいいと思います。
すごく面白そうですね。楽しみです。では最後にNoMapsにかかわる次の世代に向けて、メッセージをお願いします。
他では「無理でしょ」と一瞬で却下されるようなことも、NoMapsだったら「もしかしたらできるかも」と考えてくれる。非常に懐の深いイベントだと思います。
委員の人もそうだし、廣瀬さんもそうだし、みんな否定せずに一緒に考えてくれる懐の深さ、ゆるさを持ったイベントです。
これは今後も大事にしていきたいですし、なくならないものだと感じています。
そんな良いイベントなので、まずは参加してみて、仲間を作って、新しいチャレンジをしてみてほしいと思います。
インタビューを終えて
「敷居が高い」と「ゆるい」
一見相反するこの2つの言葉が、どちらもNoMapsを形容していること。それこそがNoMapsが“変”で“面白い”ことの一番の理由なのかもしれない。
たくさんの“変”で“面白い”ことが求心力となって、これからのNoMapsを、これからの札幌を、そしてこれからの北海道を作っていく。
「やりたいことは北海道でできる」
それがスタンダードになる未来もそう遠くないかもしれない。
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